みなさんこんにちは。
書籍「幸せになる勇気」を読みました。
この本は、100万部のベストセラーにもなったアドラー心理学についてまとめた著書「嫌われる勇気」の続編です。
”トラウマなんてものは存在しない”や”褒めたり叱ったりはしない”などの思想で人気となりました。
前作が基礎編だとしたら、今作は実践編といった感じです。
悩みを抱えた教師がアドラー心理学を学ぶ哲人に教育現場の悩みを打ち明けていくのですが、
その悩みがとても現実的です。
「アドラー心理学を勉強して教師になったけどこの心理学はまるで使えない!」
と嘆き、憤る教師に哲人が一緒に答えを探していくという内容です。
また、「嫌われる勇気」を読んでイマイチ釈然としなかった部分にスポットライトを当てた作品であるともいえます。
この本の中には、前作の内容が頻繁に出てくるので、そちらを読んでいない方は少し分かりにくい場面があるかもしれません。
なので先に「嫌われる勇気」を読んでおくことをおすすめします。
「嫌われる勇気」についても記事を書いているのでよろしければご覧下さい。
それらを踏まえたうえで、この本には何が書いてあるのか、そしてどんな部分がおすすめなのかをこれから紹介していきたいと思います。
アドラー心理学は宗教なのか?
ずばり、こういった章が本の中にあります。しかも一番最初に。
前作を読んだ方には分かるかもしれませんが、なかなか”それっぽい”匂いがするんですよね。
というのも無理からぬ話で、この本と前作は、悩みを抱える青年と、それを聞き、助言する哲人という二人の対話だけで世界が構築されています。
そうして青年は哲人によって語られるアドラー心理学の思想に感心し、悩みの霧が晴れてその考えを現実世界で活用しようというところで前作は終わっています。
実際には長い年月をかけているのですが、その部分はダイジェストとなっているため本一冊を読み終えた時間とほぼ同じぐらいの長さで人の悩みがサクッと解決され、思考が変えられていくという錯覚を受けるのです。
この本は全編が対話形式で進んでいるため、短い時間で読むことができる利点がここではマイナスに働いているのではないかと思いました。
宗教と哲学の違いとは何か
では宗教と哲学と違いとは何なのか、アドラー心理学は宗教なのか。
本書ではこう言っています。
哲学は考え続けることであり、宗教は知ることや考えることの歩みを止めてしまうこと。
アドラー心理学は宗教ではありません。そう見る人がそう結論づけてしまうのです。
私も哲学と宗教との違いを考えていたのでこの考えを知ることができて良かったです。
褒めたり叱ったりするのは本当にいけないことなのか?
アドラー心理学では褒めたり叱ったりする賞罰を否定しています。
それを推奨してしまっては、褒められなければ進んで良いことをしないし、罰せられなければ悪いと思っていることでもしてしまうようになるという理由からです。
これについて、ページ数を多く割き、褒めることと叱ることのそれぞれの良くない点を丁寧に説明しています。
簡単にまとめるとこうなります。
叱ることの何がいけないか
叱ること、これは言葉による暴力だと本書ではいっています。
そして、こうした暴力によってコミュニケーションをとろうとする相手を人間は尊敬しようとは思わないと説いています。
確かに、すぐ怒る人間で尊敬されている人っていませんよね。
褒めることの何がいけないか
褒めること、確かに褒められると嬉しくなるけど、そうなると他者の評価ばかりが気になるようになってしまう。
そうなると、自分の中の行動の基準が「褒められるか否か」になるため、その人のためにならないといいます。
長期的に、「自立」の面で見ると良くないってわけですね。
これを読んで思ったことは、恐ろしく強靭な精神が必要だなぁということです。
要約すると、他人の価値観に自分を委ねることなく自分で自分の価値を認める。
そうするために賞罰は好ましくないというわけです。
この価値観を理解して実践していくのは相当時間がかかるのではないでしょうか。
それができれば確かに悩みを抱えることは減っていくと思いますが、そうなるまでが苦しい。
アドラー心理学が人生の劇薬と呼ばれるのも頷けます。
「愛」とは一体何なのか?
この本の最後には「愛」についてが書かれています。
普段私たちはなかなか愛について話し合うことはありませんよね。
キリスト教などが普及されていれば違うのかもしれませんが、日本人にとって
神は見守っているもので、直接愛してくれる存在ではありません。
そんな愛の説明がラストに、重要なものとして説明されます。
愛を語るなんてやっぱり宗教っぽいなあと読んでて思ったりもしたのですが、
ここで語られる愛は少し毛色が違いました。
ただ相手のことを想い続ける神の愛ではなく、種の保存をするための動物的な愛でもない。
もっと心理学的で人間的な「愛」について説明しているのです。
この視点で愛を語られることは私にとって初めてだったので、勉強になると同時に、感銘を受けました。
この部分は本の結末部分であり、アドラー心理学を統括する部分でもあります。ご自分で読んでみることを勧めます。
まとめ
人との寄り添い方を指南しています。
いかに自分の考えを持ちつつ、それを押し付けずに他人と円滑に関わっていくか。
この問題をこの本はアドラー心理学の立場から分かりやすく説明しています。
もちろん、これを実践するもしないも自由です。
しかし、実践しようとしたのなら、それを曲げてはいけないのだと感じました。
そういった行動は他人を振り回して自分を苦しめるものだからです。
二枚舌や八方美人を人が嫌うのは、その人の核がブレているからだと思います。
相反する2つの考えを使い分けている人間に人は親身にはなってくれません。
揺らがずに自分の考えを貫くことは辛いことかもしれませんが、その辛さに負けて
芯がブレてしまうと、結果的にもっと辛い状況になってしまうこともありえます。
今現在の自分を逐一確認し、思考を止めることなく常に疑問を持ち続けながら日々を生きていく。
”自分を強く持つ”、そのための勇気の大切さをアドラー心理学は説いているのだと思います。